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2008年04月 アーカイブ

2008年04月11日

芳賀矢一の酒

芳賀矢一の酒
国文学者の芳賀矢一(福井生まれ・慶応3?昭和3)は、東宮時代の昭和天皇の侍講であったが、二日酔いで、急病と称して参内をとりやめたというのだから、まさに酒豪であった。東京帝大の「国文談話会」の懇親会には、出席者の前に徳利又はビール瓶を一本おいたが、この博士の前には角瓶のウイスキーを一本ときまっていた。それを散会の前に一本あけるのだった。

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2008年04月17日

一番安全な道

一番安全な道
酔っぱらいもときには思慮をはたらかすことがある。あるいは、これからお話しする人のように、よい思いつきをすることも。この人は町に出かけたその帰り道、ふつうの道の上を歩かず、よりにもよって、道のすぐそばを流れている小川の中を歩いていったのだ。そこへ、なにか困っている人や酔っぱらいを見るとすぐ世話をやかずにはいられなくなる世話好きな人が通りかかって、さっそくこの酔っぱらいに手をさしだそうとした。「もしもし、あなた、川の中を歩いていらっしゃることに気づかないのですか。

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道はこっちですよ。」こう彼が言うと、酔っぱらいは、「ふだんは私も乾いている道の方が歩きやすいと思うんですがね、今日はちょっときこしめしすぎたもんで」と答えた。「それだからこそ、あなたを川から助け出してさしあげようというのです」とその親切な人は言った。「いや、私もそれだからこそここにいるんです。だって、川の中を歩いてて転んでも、道の上へ落ちるだけですが、道の上を歩いてて転んだら川の中へ落っこちてしまいますからね」と酔っぱらいは答えて、人差し指で自分の額をとんとたたいた。まるで、こう見えてもこの中には酔いばかりではなく、ほかの人には考えもつかぬことが、まだ入ってたんですよ、と言わぬばかりに。

2008年04月26日

お追従者の、二枚舌の、ご機嫌とりの、欲深か者

お追従者の、二枚舌の、ご機嫌とりの、欲深か者
昔、ある人の言うに、当世の人々が、あの男は賢明有能で英知を持っていてすばらしい、とほめる人をよくよく観察すると、みな、お追従者の、二枚舌の、ご機嫌とりの欲深か者である。なぜならば、家老や近習衆の言行をうかがっていて、大仰おにほめ上げ、おかしくもないことをも高笑いして迎合する反面、目下の侍や農民、町民を無慈悲に酷使、搾取して、蓄財に余念がない。精を出すことはといえば、遊山行楽に遊女若衆のうわさ、同僚のわる口、家老や近習衆が上戸だと知ると、「酒ほどすばらしいものはございません。憂いを払う玉箒(たまはばき)と言って、昔から賢人のたしなむものです。一ぱい聞こし召せばよろすの苦労を忘れ、憂気を散じ、血行を促し、まこと、百薬の長でございます」と誉め、下戸と知ると、「「酒ほど害のあるものはございません。血気を乱し、肝臓をいため、不慮の恥をかくばかりではなく、酔いの余りに命を失ったりする基です」とけなし、好きでもない餅を食ってみせ、飲みたくもない茶を飲んで、「餅は老若とも筋肉の働きを盛んにし、茶は腹中の濁気を清め、病を除きます。まことに酒の十損、茶の十徳でございます」と誉めちらす。

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